■いま、日本の失われた30年と呼ばれる景気の長期低迷が問題となっていますが、その一因には、派遣法の拡大や、根拠も分からない有期雇用契約制度の乱用など、雇用の規制緩和による流動化政策があります。
その結果、労使交渉がままならない民間労働者の4割に及ぶ非正規労働者など、中小零細企業の労働者の賃金は、先進国の中でも極めて低い最低賃金に張り付いた状態が問題となっています。
■こうした格差社会の問題が明白になっている最中で、なんと、この国の公務を担う職場で、2020年から非常勤職員の採用=任用(公務員は雇用ではなく「任用」)期間を1年に限定し、毎年新たな採用とする劣悪な「非正規」制度を始めました。これを「会計年度任用職員」と言います。ちょっと難しい用語です・・・。
そして身分は「公務員」なので、民間労働者と同じ労働基本権は無く労使交渉の権利も無いため、権利としては民間労働者以下の、低賃金で使い捨ての「名ばかり公務員」としての実態が社会問題化しています。 それは結果的に、この国の行政を保つ公務職場の劣化を引き起こしていく事にもつながります。
■公務員の数は国家公務員と地方公務員を合わせておよそ340万人で、会計年度任用職員の実態は、110万人を超えると言われています。その割合は自治体によっては、およそ5割にまで及んでいると言われています。
※ちなみに国際比較では、日本の公務員の比率は非常に低く「小さな政府」の状態です。
■今回の集会では、まさにコロナ禍に都合よく使い捨て公務員として扱われ、現在まで自治体との裁判闘争を継続している、ユニオン北九州の組合員の報告も行いました。
■この間、日本のGDPが先進国の中で低迷しながらも、大企業と株主利益は増大する、格差経済とも言うべき異様な経済構造が進行しています。
その根幹には、有期雇用契約問題を含めた、労働者の権利行使が実質的に制限された「非正規」労働問題が、大きく横たわっていると言わざるを得ません。
これから、IT技術の拡大と共に、無権利な雇用なきギグワークの問題も顕在化していくと思われますが、この間の最低賃金の大幅引き上げの必要性が社会的に認知されている事は、実は労働者の賃金と権利の向上が、経済の好循環への重要な土台にある事を如実に示しています。
■私たち合同労組の役割は、あらゆる職場の差別と不利益から労働者を守ると同時に、労働政策の改善を求める社会的なつながりを拡大して、影響力を強める事にあります。
民間労働者か公務員かを問わず、私たちの人権と労働の付加価値を消し去る「非正規」労働問題から、隠れた自治体行政の劣化や、格差社会と人権と経済に及ぶ重要な社会問題に抗する課題として、非正規公務員の問題の取り組みを進めてい行きたいと思います。